Vol.4 デジタル時代のモノづくりに思うこと
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スタッフ:なんでもシステム化、IT化されている現代ですが、ひとつひとつ職人の手によって家具をつくり続けているカーフとして、何か感じていることはありますか?
(島田)今懸念しているのは、豊かな時代になってきたけれど、その豊かさと云われるものが家を取り囲むすべてが『石油製品化していく』、『家電化していく』、みたいな怖さです。
例えば、個体差が無く汚れに強くお手入れが簡単、そしてすべてが電子機器で制御された家に住んでいたら、何かがおかしくなりそうな気がしてしまうんです。
どんどんファストファッション、ファストインテリアみたいな傾向になってしまうことに我々がブレーキをかけていく必要があるんじゃないかと思っています。
しかし最新化が進むその一方では、古い街を再生していこうみたいな動きもあるから、すごく両極ですよね。ヴィンテージの車が好きっていう人もいれば、テスラが好きという人もいるみたいに。
今でこそ、エシカルや、SDGsなんて云われているけど、そもそもこの仕事を始めた35年前から、『良いものを長く使う』、『古いものは修理して使う』そういった二次流通があることを前提にしてきたので、そこは今後も続くものだし、続けていかなくてはいけないことだと思っています。誰かがいらなくなったものを、必ずまた別の誰かが使って循環していくように。
モノって創り手や使う人そのものを表すと思うんですよ。
例えば、同じ図面を二人の職人さんに渡したとして、パーソナリティが違えば全く別のものができてくるように。デザインはまさにそれです。そこには必ず、その人の『人となり』が出てくるものなんです。この『人となり』は、いろんな経験の積み重ねでできるものだったりします。
昔は、人生の先輩が自分で経験をして学んだものを若い人に教えて、学んで、というように先輩の道をなぞっていく流れがありましたけど、今は逆で、若い人の方が時代を先取りしているから、先人の経験そのものが手かせ足かせになるような部分があるでしょう。
先輩が「昔はこうだったんだよね」というと、
後輩が「え?そんなに効率悪い事してたんっすか?これで一発っすよ。」
先輩は「・・・」
こんなことも往々にしてありますよね。
効率も大事、便利なことも大事だけれど、そればかりではいけないと思うんです。
若い頃は食器なんかもとりあえず食事ができればいいと言って量産品ばかりを使っていたけれど、ある時、焼き物の器でお茶を飲んだら『なんかいつものお茶と全然違う気がする…』なんてことに気づいて、自分で陶器を探して使い始める…。そんな小さな体験の積み重ねをして、良い物を知ってく流れが理想だと思っています。
些細なことかもしれませんが、もっと良いものを知る機会を作ったり、あえて遠回りしたり、そんなことをした方が、辿り着ける場所は多いのではないかと思います。
(幾子)オリジナル家具を作り始めた頃に欧州のアンティーク家具が輸入されるようになってきていたので、”家具といえば決まりきった婚礼家具”といった今までの日本の家具文化とは違う時代が来る、我々が作っているような家具を選ぶ人、良いと言ってくれる人も増えて、日本人の意識や感覚とセンスもより豊かになる!そう思っていたんですが、実際はそうでもなかったです(笑)。
また別軸の、ファストファッションやファストインテリアが現れて。そこに今度は、ITやいろんな素材が混ざってきて。
当時、私たちが思い描いていたインテリアの未来は予想していたよりもだいぶ違ってきています。でもそういった効率や先進技術みたいなものがある逆側で、古民家を好む人も増えたり、田舎に移住する人が増えたりして、副作用?反作用?みたいなものからなのでしょうか。
SGDsもうそうだけど、社会全体がいま、そこでバランス取っているのかな、とは思いますよね。
(島田)古民家って言っているけど、田舎で育った我々からすると『それ古民家とは言わないのでは…?』ということも多々ありますよ。(笑)
(幾子)そうそう。ビンテージって言っているけど、それまだ30年しか経っていないものですよね?みたいなこともありますしね。
次回はいよいよこのシリーズの最終回です。
創業時から島田夫妻(カーフ)の根底にある、ヨーロッパのアンティーク家具や北欧のビンテージ家具という存在。それらを存分に表現した場所へ。
カーフがプロデュースするビンテージ家具ショップ、Blackboardつくばのオープンへと話は移ります。お楽しみに。
「karf History 〜カーフスタイルができるまで〜」
Vol.1 1980年代 創業と初期のオリジナル家具
Vol.2 1990年代 北欧スタイルへ
Vol.3 普遍であること
Vol.4 デジタル時代のモノづくりに思うこと
Vol.5 ビンテージ家具とBlackboard