Journal

Vol.3 普遍であること

 

<<「karf History 〜カーフスタイルができるまで〜  Vol.2」はこちら

 

 

スタッフ:家具をデザインする時に大切にしていることや、デザインの源になっていることなどはありますか?

 

(島田)オリジナル家具をデザインする時は、自分の中から湧き出てくるアイデアというより、古い家具のことがいつも頭の片隅にあって、同時に素材を活かしてシンプルつくることを基本としています。そこは35年経っても変わっていません。

 

例えばイギリスの図書館に置いてある家具。機能性重視で作られているから必要以上にデコラティブじゃないんですよ。最低限のデザインしかされていない…けれど飽きない。そのデザインであることに安心感さえ覚えるというか。素材を活かしてシンプルに作ると、そんな気持ちになるのかもしれませんね。

 

karf_ジャーナル3-1

図書館のカードを収納しているような、事務機器が木製で作られていた時代をイメージした家具たち。

 

(島田)デザインは作られた時代によって表現方法が変わりますよね。カントリーがブームだったらカントリーに寄せたものになるし、モダンがブームだったらモダン、インダストリアルだったらインダストリアルというように。

でも、だからといってそのまま流行を追ってしまうのは違うと思っています。デザインを考えるときは家具を単体で見るのではなく、空間やインテリアにどう合わせるか「こんな空間ならこんな家具が似合うよね。」といったようにインテリア(空間)の中でどう見えるか、その点をものすごく大事に考えています。

 

家具はあくまでもインテリアの一要素なので、それひとつの完成度が高ければ高いほど、個性が際立ち過ぎて他が弱まってしまうんです。デコラティブなものをいっぱい集めてしまうと、げんなりしてしまいます。だから、家具はちょっと物足りないぐらいがちょうど良いんです。そこに少しずついろんなものを集めて調和させていくのが、インテリアの面白いところです。

 

昔、お客様と話をしている時に、よくこんな事を言っていました。「20代で結婚する時に買った家具を、50代になってから恥ずかしくてもう使えない…」なんてことにはなりたくないですよね、と。せっかく高い買い物をするのだから、「20代に買った家具を50代になっても変わらず使っている、何年経っても飽きないよね。」と言ってもらえるような家具を作って提供する、そんな仕事が理想です。

 

 

(幾子)カーフとして最初に出したオリジナル家具に、ライブラリーというシリーズがあったんです。図書館にあるような家具をイメージした、ファイルチェストやカードを入れる小さい引き出しをたくさん並べたものです。

パイン材のチェストも「ファイルチェスト」という名称にして、それは今でも気に入っていて自宅でもずっと使っていますよ。パイン材はカントリー家具というイメージではないものを作っていましたね。

 

karf_ジャーナル3-2

パイン材でもシンプルな「ファイルチェスト」とナンバーのついたロッカータイプのものは、今も自宅で使っています。

 

 

karf_ジャーナル3-3

カントリー家具の印象が強いパイン材を事務器風のデザインにしたオリジナルコレクション。

 

 

 

スタッフ:デザインする上で情報収集はどんなことをしますか?

 

(島田)本当は雑誌も見たくないし、展示会にも行きたくないんですよ。(笑)才能に溢れた人たちがいっぱいいるし、その才能をうまく活用した企業もいたりして、そういうのを見ると、なんだか無力感に襲われるというかね。

それに個人的には新しいデザインがあんまり好きじゃないということもありますね。北欧家具もいろいろ新しいブランドが出ていますけど、見る分にはいい。でも扱いたいとは思わないですね。なぜなら、それらは賞味期限が短いような気がするから。だから新しいモノの情報よりは、古いモノを見ることの方が多いです。

 

 

カーフが掲げる『OLD MODERN FURNITURE』。これは僕の造語なんですが、ここで意味するモダン(新しい、現代的)は、今現在のモダンを指すものではなく、あくまでも1950年代60年代の家具のことを指しています。その年代のモダンスタイルが好きなので『OLD MODERN』としているんです。

時代を経ても残ってきたものに対してすごく安心感があるんですよね。だから自分たちも商品寿命が長いもの、ロングライフの商品を作りたいですし、扱いたいと思っています。そのためには、あまり旬なデザインは身に纏わないほうがいいんです。

僕らは常に普遍性みたいなものを導き出そうとしていのかもしれませんね。厳密に言うと不可能かもしれませんが。

 

karf_ジャーナル3-4

『OLD MODERN FURNITURE』の原点となったLAの知人宅のリビング。

 

(島田)僕は自分自身の事をデザイナーではなく、あくまでも編集する人、エディトリアルデザイナーだと思っています。家具のディテールを編集していく中で、「こういうのがいいんじゃない?」、「でも脚のデザインはこうで」、「背もたれはこうで…。」といったようにね。結構うるさいエディターかもしれません。(笑)

 

根底には今までいろいろ見聞きしたモノ・コトの蓄積から来ているものがあります。新しくデザインをクリエイトしているということではなく、軸足は常に古いモノにあって。新しい家具をオリジナルで作り出しているから矛盾する点ではあるんですが、常に古いものに寄り添っていたいんです。

 

過去を捨てられないヤツ。(笑)良く言えば『継承』そういうことにしておきましょうか。なんでも新しいからと飛びつくタイプはないですね。警戒しながらも少しずつ慣れていこうかみたいな。最初は拒否反応があって、そこに行くまでの時間がかかるんですよ。保守的なのは県民性ですかね(笑)

 

 


 

今回、島田代表が話してくれた話はまさに『故きを温めて新しきを知る』ということ。年代物の家具は今の自分たちでは経験できない時代背景を纏っているかと思うと、そこから学べることは多いですよね。

さて次回は「デジタル時代のモノづくりに思うこと」についてお話いただきます。

 

 

karf History 〜カーフスタイルができるまで〜

Vol.1 1980年代 創業と初期のオリジナル家具
Vol.2 1990年代 北欧スタイルへ
Vol.3 普遍であること
Vol.4 デジタル時代のモノづくりに思うこと
Vol.5 ビンテージ家具とBlackboard